大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和30年(行)45号 判決

兵庫県西脇市西脇仲之町一四〇

原告

広田米子

右訴訟代理人弁護士

臼杵敦

同県同市西脇

被告

西脇税務署長

大城戸享

右指定代理人

沢田安彦

井上隆二

中村匡男

岡部光

右当事者間の昭和三〇年(行)第四五号更正決定取消請求事件につき当裁判所は本件訴が取下げられたものと看做され終了したかどうかの点に弁論を制限し、次のとおり判決する。

主文

本訴は、昭和三十一年三月十四日の満了により取下げられたものと看做され終了した。

昭和三十一年七月二十七日附を以てした原告の口頭弁論期日指定申立以後の訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、昭和三十一年七月二十七日附を以て本件訴訟事件につき口頭弁論期日の指定を求める旨を申立て、その事由として、原告は本件訴訟の昭和三十年十二月十四日午前十時の口頭弁論期日に出頭しなかつたが、該期日前に右期日変更の申請書を当裁判所に提出していたにも拘らず、該期日が実施され、新期日の指定がなかつた。

よつて、ここに口頭弁論期日の指定を求めると述べ

証拠として、証人井上茂の証言を援用し、

被告指定代理人は、本訴は、昭和三十年十二月十四日午前十時の口頭弁論期日に当事者双方とも出頭せず、爾後三ヵ月内に当事者双方の孰れよりも口頭弁論期日指定の申立がなかつたから民事訴訟法第二百三十八条の規定により爾後三ヵ月を経過した昭和三十一年三月十四日に取下げがあつたものと看做されたものである。したがつて、原告のその後における期日指定の申立は許されないと述べた。

理由

本件訴訟の昭和三十年十一月十六日午前十時の第一回口頭弁論期日に当事者双方が出頭し、弁論の上、当裁判所が次回口頭弁論期日を同年十二月十四日午前十時と指定告知したこと、及び右続行期日に当事者双方とも出頭しなかつたため、新期日の指定なくして休止に付されたことは、いずれも本件記録に徴し明白である。

原告は、右続行期日前に該期日変更の申請書を提出したと主張し、証人井上茂の証言によれば、訴外井上茂が原告の依頼により、昭和三十年十二月十日頃、右口頭弁論期日を変更せられ度い旨の期日変更申請書を当裁判所民事係行政事件宛として、普通郵便を以て発送したことを認めることができる。しかして、右郵便の発送地より当裁判所に宛てた普通郵便は特段の事情のない限り、通常の場合三日を出ないで到達することは顕著な事実であるから、右郵便物は前記口答弁論期日前には当裁判所に到達したものと推認することができる。しかしながら当時施行されていた民事訴訟の継続審理に関する規則第三条によれば、期日変更の申立書にはその事由を具体的に記載し、その疏明資料を提出しなければならないものであるにも拘らず、原告の前記申請書に記載された事由は単に「都合により」という丈のものであり、而も何等の疏明資料も提出しなかつたことは、前記井上茂の証言によつてこれを認めることができる。したがつて原告の前記申請書は期日変更の申立としては要件を具備しない不適法のものという外はなく裁判所が不適法な申立を無視しても何等差支えがないものといわねばならず、当裁判所が現実に該期日を実施して、休止に付したこと前述のところである。

しかして、本件につき、その後三カ月の法定期間内に当事者双方の孰れよりも口頭弁論期日の指定を申立てた形跡がないから本件訴訟は民事訴訟法第二百三十八条により昭和三十一年三月十四日の経過とともに取下げられたものと看做され、ここに終了したものというべきである。

したがつて、その後、昭和三十一年七月二十七日附翌日到達(記録上明白である。)の期日指定申請書を以て、本件訴訟手続の進行を求め、その口頭弁論期日の指定を求める原告の申立は失当といわねばならない。

よつて、当裁判所は、ここに本訴が取下げられたものと看做され、終了した旨の終局判決をなすこととし、前示昭和三十一年七月二十七日附を以てした期日申立後に生じた訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九十五条、第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 尾鼻輝次 裁判官 三好徳郎 裁判官 大西一夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例